大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 平成9年(ネ)238号 判決 1997年10月16日

呼称

控訴人

氏名又は名称

ミナト機械販売株式会社

住所又は居所

北海道余市郡余市町黒川町一二一二番地三

代理人弁護士

北潟谷仁

呼称

被控訴人

氏名又は名称

株式会社ミナト

住所又は居所

北海道余市郡余市町栄町四六番地

代理人弁護士

肘井博行

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  事案の概要

原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  争点に対する判断

当裁判所も、被控訴人の本訴請求は理由があるので認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」第三に説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決八頁九行目の「証拠」から同九頁四行目の末尾までを次のとおり改める。

「 控訴人は、『ミナト』、『みなと』、『港』、『湊』等の商号は北海道の港町で一般的に用いられており、被控訴人の営業表示として広く認識されているとはいえない旨主張し、証拠(乙四ないし二〇、控訴人代表者本人)によれば、北海道内には、控訴人主張のような商号を用いる会社等が多数あり、その中には、水産加工機械の製造販売を業とするものも数社あることが認められる。しかし、右証拠によっても、控訴人と被控訴人が本店を置く余市町内には、両社のほかには、右のような商号を用いる水産加工機械の製造販売業者は見当たらず、余市町外の水産加工機械の製造販売業者についても、被控訴人に比肩すべき実績及び知名度等を有するとまでは認められないから、右事実をもって、被控訴人の商号及び営業表示が余市町及び北海道全域において、水産加工機械の取引者及び需要者の間において、周知性を有するとする前記認定を左右するものではなく、控訴人の右主張は、採用することができない。なお、控訴人は、控訴人の商圏は余市町外であって、余市町内では営業していない旨主張するが、控訴人は、余市町内に本店を置き、従業員五名を雇用するなどして水産加工機械の製造販売等の拠点としているものであり(控訴人代表者本人、弁論の全趣旨)、余市町が控訴人の営業地域であることは明らかであるから、控訴人の右主張は採用することができない。」

二  原判決一一頁五行目の「あるし、」の次に「本件全証拠によっても、」を加える。

三  原判決一三頁一〇行目の末尾に続けて次のとおり加える。

「 また、控訴人は、水産加工業関係者の中で、控訴人と被控訴人の両者を混同する人はおらず、不正競争防止法上の混同のおそれには該当しない旨主張する。しかし、現に混同が生じている事実が存するほか、少なくとも親子関係、系列関係、提携関係等があると誤認させるおそれが生じていると認定できることは、前記のとおりであるから、控訴人の右主張は、採用することができない。」

四  原判決一四頁八行目の末尾に続けて次のとおり加える。

「 なお、控訴人は、控訴人の設立によって、被控訴人の営業成績が低下したとか、その危険にさらされた旨の事実は何ら主張立証されていない旨主張する。しかし、不正競争防止法三条一項では、現実に営業上の利益が侵害された場合のみならず、侵害のおそれがある場合にも、侵害の停止又は予防を請求することができるところ、同法二条一項一号の他人の営業と混同を生じさせる行為が認められるときには、特段の事情がない限り、営業上の利益の侵害のおそれがあるものというべきである(最高裁昭和五六年一〇月一三日第三小法廷判決・民集三五巻七号一一二九頁参照)。そして、本件において、右の特段の事情を認めるに足りる証拠はないから、控訴人の右主張は、採用することができない。」

五  原判決一七頁七行目の「被告は」の次に「、控訴人の設立」を加える。

よって、右と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 瀬戸正義 裁判官 小野博道 裁判官 土屋靖之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例